概要版

文献情報

文献番号 201114014B
報告書区分 総合
研究課題 小児反復性中耳炎に対する十全大補湯の有用性に関する多施設共同二重盲検ランダム化比較試験
課題番号 H21-臨床研究・一般-007
研究年度 平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関) 吉崎 智一(国立大学法人金沢大学 医薬保健研究域医学系 感覚運動病態学) 
研究分担者(所属機関) 喜多村 健(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科認知行動医学系専攻システム神経医学講座耳鼻咽喉科学分野)、小林 俊光(東北大学大学院医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)、高橋 晴雄(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医療科学講座 耳鼻咽喉頭頸部外科学領域)、山中 昇(和歌山県立医科大 耳鼻咽喉科・頭頸部外科)、渡辺 行雄(富山大学大学院医学薬学研究部(医学)耳鼻咽喉科頭頸部外科学)、原渕 保明(旭川医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)、折笠 秀樹(富山大学大学院医学薬学研究部 バイオ統計学・臨床疫学)、伊藤 真人(金沢大学医薬保健研究域医学系 耳鼻咽喉科・頭頸部外科) 
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
開始年度 平成21(2009)年度
終了予定年度 平成23(2011)年度
研究費  
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
急性中耳炎は小児の約75%が2歳までに最低1回は罹患する、頻度の高い疾患である。近年、肺炎球菌やインフルエンザ菌などの急性中耳炎起炎菌の薬剤耐性化、集団保育の低年齢化などに伴い、乳幼児急性中耳炎の難治例が増加している。特に1歳未満で急性中耳炎に罹患した乳幼児の約60%が難治化することから、罹患頻度の高い難治性感染症である。  本研究の目的は、小児反復性中耳炎に対する漢方補剤である十全大補湯の有効性を検討し、「統合医療分野のエビデンス創出」法を確立するとともに、抗菌薬治療の限界を呈する難治性細菌感染症の、治療戦略のパラダイムシフトを促すものである。
研究方法:
全国多施設共同非盲検ランダム化群間比較対照試験にて、小児反復性中耳炎に対する十全大補湯の有効性を評価し、本疾患に対する新しい治療法を開発する。当初は二重盲検試験を予定していたが、偽薬の作成に際し味や匂い、食感などの漢方薬独自の特徴克服には相応の時間を要したため、非盲検ランダム化試験とした。研究には複数名の「小児急性中耳炎診療ガイドライン」作成委員をはじめとして、全国の26医療機関が参加した。
結果と考察:
反復性中耳炎に対する治療として十全大補湯の併用が、その罹患頻度を低下させた。さらに鼻風邪(coryza)の罹患頻度の低下を認めた。急性中耳炎は上気道における炎症や感染が経耳管的に伝播し発症するとされており、十全大補湯の急性中耳炎反復予防の一要因として、患児の鼻風邪罹患の低下が挙げられる。さらに試験中の抗菌薬の投与日数の低下がみられた。反復性中耳炎の中でも、特に@頻回に急性中耳炎を繰り返す重症例、A2歳未満児、B集団保育通園児、C家庭内受動喫煙暴露児等のハイリスク群において、本治療の有効性がより高い可能性が示された。本研究が提示した漢方製剤を併用する統合医療は、従来の西洋医学的治療では対処できない抗菌薬治療の無効症例に対して、治療ストラテジーのパラダイムシフトを促すものである。
結論:
小児反復性中耳炎に対する十全大補湯の効果について多施設共同非盲検ランダム化比較試験を施行した結果、その有効性が確認された。このことは、難治性感染症に苦しむ患児ばかりではなく、保護者の心身両面での育児負担の軽減に繋がるものである。今後、本試験結果に基づく治療コンセプトの啓蒙とともに、引き続きRCTへと移行し、さらにレベルの高いエビデンスを確立することが急務である。
公開日 2012年06月29日
研究報告書

ファイルリスト

公開日・更新日

公開日 2013年03月06日
更新日 -

行政効果報告(助成研究成果追跡資料)

文献情報

文献番号 201114014C

成果

専門的・学術的観点からの成果 リスクファクターについて、  小児反復性中耳炎の病態と危険因子については、以前から低年齢、集団保育、哺乳体位、兄弟の存在、受動喫煙、母乳栄養の欠如など様々な要因が考えられてきたが、今回の前向き研究で、2歳未満、集団保育通園児、家庭内受動喫煙が反復性中耳炎のリスクファクターであることが明らかとされた。さらにこれらのハイリスク群において、より十全大補湯の有効性が高かったことから、同薬剤の患児の未熟な免疫系の改善に及ぼす効果が注目される。今後その作用機序について、さらなる検討が必要である。
臨床的観点からの成果 反復性中耳炎に対する治療方針として抗菌薬投与がその代表的な治療法とされてきたが、漢方補剤である十全大補湯の併用が、その罹患頻度を低下させる、新しい治療指針の一つとして有効と考えられた。鼻風邪(coryza)の罹患頻度も投与群においては非投与群に比較し試験中の罹患頻度が低かったことから、中耳炎の誘因である風邪を抑制する効果が期待された。抗菌薬の投与日数も投与群では短かったことから、抗菌薬の濫用抑制効果が見られた。
ガイドライン等の開発 「小児急性中耳炎診療ガイドライン」の次の2013年版(第3版)に「小児反復性中耳炎」の治療として、クリニカル・クエッションとして取り上げら、推奨度Bとして推奨される治療として記載された。
その他行政的観点からの成果 小児反復性中耳炎に対する十全大補湯の有用性について検討し非盲検ランダム化比較試験においてその有用性を確認することで当初の研究目的である@統合医療分野のエビデンス創出」を行うという本研究課題を達成した。さらに明らかな有用性を示した研究結果は、A 中耳炎難治化に伴う医療資源・コストの節減につながるものでありB頻回の通院などの保護者の育児負担が軽減され、保護者の労働資源の確保になるばかりではなC抗菌薬の濫用を抑制し、その適正使用により耐性菌増加に歯止めをかけるものであり、その医療経済学的効果は大きい。
その他のインパクト 現在、国内外の複数の耳鼻咽喉科関連学会において発表を行うとともに、論文を投稿中である。

発表状況

分類 種類 件数 備考
原著論文 和文 9件  
英文等 12件  
その他の論文 和文 23件  
英文等 4件  
学会発表 国内学会 16件  
国際学会等 6件  
その他の成果 特許 出願 0件 「出願」「取得」計0件
特許 取得 0件  
施策への反映 0件  
普及・啓発活動 0件  

特許

分類 特許の名称 発明者名 権利者名 特許番号 出願年月日 取得年月日 国内外の別
               

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

  著者名 タイトル 雑誌名 開始頁
-終了頁
掲載論文のDOI(デジタルオブジェクト識別子)
原著論文 1 Makoto Ito, Muneki Hotomi, Yumiko Maruyama et al  Clonal spread of b-lactamase-producing amoxicillin–clavulanate-resistant (BLPACR) strains of non-typeable Haemophilus influenzae among young children attending a day care in Japan   International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology 74 (2010) 901–906         -   2010    
原著論文 2 Yumiko Maruyama a,b, Shigeyuki Murono et al  Efficacy and safety of garenoxacin in the treatment of upper respiratory tract infections  sus Larynx 2011 Nov 9. [Epub ahead of print]         -   2011    
原著論文 3 Hisashi Sugimoto, Makoto Ito, Miyako Hatano et al  A case of chronic otitis media caused by Mycobacterium abscessus  Auris Nasus Larynx 37 (2010) 636–639         -   2010    
原著論文 4 Hisashi Sugimoto, Makoto Ito, Miyako Hatano et al  Cochlear implantation in a patient with superficial siderosis  Auris Nasus Larynx 2011 Nov 11. [Epub ahead of print]         -   2011    
原著論文 5 Hisashi Sugimoto, Makoto Ito, MD, Shinya Yoshida et al  Concurrent Superselective Intra-arterial Chemotherapy and Radiotherapy for Late-Stage Squamous Cell Carcinoma of the Temporal Bone  Annals of Otology, Rhinology & Laryngology 2011 Jun;120(6):372-376         -   2011    
原著論文 6 Hisashi Sugimoto, Makoto Ito, Miyako Hatano et al  Roles of epithelial-mesenchymal transition in squamous cell carcinoma of the temporal bone  Otol Neurotol. 2011 Apr;32(3):483-7         -   2011    
原著論文 7 Ito M, Maruyama Y, Murono S, et al  Efficacy and safety of garenoxacin in the treatment of upper respiratory tract Infections   Auris Nasus Larynx  39  512-518  2012    

公開日・更新日

公開日 2015年05月27日
更新日 2016年06月13日

▲このページのTOPへ