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文献情報

文献番号 200301194A
報告書区分 総括
研究課題 特定保健用食材の安全性及び有用性に関する研究
課題番号  
研究年度 平成15(2003)年度
研究代表者(所属機関) 池上幸江(大妻女子大学) 
研究分担者(所属機関) 池上幸江(大妻女子大学)、山田和彦(独立行政法人国立健康・栄養研究所)、合田敏尚(静岡県立大学)、志村二三夫(十文字学園女子大学)、篠塚和正(武庫川女子大学)、江頭祐嘉合(千葉大学)、奥恒行(県立長崎シーボルト大学) 
研究区分 厚生労働科学研究費補助金 健康安全総合研究経費 食品医薬品等リスク分析研究(食品安全確保研究事業)
開始年度 平成13(2001)年度
終了予定年度 平成15(2003)年度
研究費 11,300,000円
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
わが国では平成13年度より、新たな食品表示制度:保健機能食品が発足した。これは、栄養機能食品と特定保健用食品から構成され、通常の食品形態以外に錠剤やカプセルなど医薬品的な形態にも適用されることになった。特定保健用食品はすでに平成3年からあったが、これまで健康上の利点を表示することができなかった「いわゆる健康食品」についても安全性や有用性などについて科学的な実証があれば表示が可能となった。 そこで本研究では、新たな特定保健用食品制度の信頼性の確保のために、その安全性と有用性について多面的に検討することを目的とした。すなわち、健康強調表示の国際的な動向調査、糖質・脂肪酸素材の安全性や有用性、ハーブ類の安全性と有用性、ハーブ類の医薬品との相互作用、疾患モデル動物における安全性や有用性、食物繊維のエネルギー評価の考え方、について検討した。
研究方法:
本研究では、7つのテーマによって行った。健康強調表示の国際動向調査では、関連資料を入手した。糖質、脂肪酸関連素材に関する研究、ハーブ類の安全性と有用性に関する研究、疾患モデル動物における安全性や有用性に関する研究では、文献的な調査といずれもそれらに適応した系統のラットを用いた。いずれの施設でも動物実験の倫理規定に従って行った。食物繊維のエネルギー評価では、人での発酵性を被験者での計測によって行った。人による試験ではヘルシンキ宣言に基づく倫理規定を遵守した。
結果と考察:
本研究では、7つのテーマに沿って研究を行い、以下のような成果が得られた。 食品における健康強調表示の国際動向調査:食品に対する健康強調表示、ならびにいわゆる健康食品による健康被害への行政対応についてCODEX、EUとヨーロッパ諸国、および米国の状況について調査した。CODEXでは食品表示部会における議論が終盤を迎え、ステップ8となった。他方、EUでは健康強調表示についての指令が成立し、米国ではQualified Health Claim が新たに制度化されることとなり、今後のわが国の表示に影響するものと思われる。健康食品などによる健康被害への対応では、EUやヨーロッパ諸国において、広く食品による健康被害を防止するシステムがあり、EUから警告や注意喚起が発せられ、食品の回収や販売禁止の措置が執られる。 糖質関連食品素材の消化管に及ぼす影響:難消化性オリゴ糖、糖アルコール、食物繊維について安全性や有用性、あるいは開発状況について検討してきた。今年度はとくにプロバイオティクス機能をもつ菌種の同定法を中心に検討した。これまで乳酸菌などを関与成分とする特定保健用食品では菌種の同定や定量には特異性などの面で問題があった。そこで、遺伝子に基づく系統解析法としてシャペロニンの一構造遺伝子であるgroELを指標として菌種、菌株特異的なプライマーを作成し、定性、定量への適応を試みた。あわせて、カスピ海ヨーグルトについて菌種同定に本法を適用した。 機能性脂肪酸含有食品素材の安全性と有用性に関する研究:体内の脂質代謝の改善を目的とする脂肪素材が特定保健用食品として開発されている。しかし、脂肪酸は体内における代謝調節の役割もあり、本分担研究では遺伝子レベルにおける脂肪酸の機能を解明し、今後の脂肪素材の安全性と有用性評価の手法とすることを目指した。トリアシルグリセロールでは、結合する脂肪酸の種類や結合部位によって機能性に違いがあること、またその違いを遺伝しレベルで確認することができることを示した。 中枢神経機能を指向する新開発食品等の安全性に関する研究:中枢神経機能を指向する新開発食品等にはハーブ類が利用されているが、その安全性確保の方法は確立していない。そこで本分担研究では、現在わが国で利用頻度の高いものについてリストアップし、安全性や有用性に関するデータの整理を行った。さらにわが国で実績の高いハーブ類と米国でのそれらと安全性と有用性をデータベースを用いて点数化し、比較検討した。その結果、わが国で利用度の高いハーブ類は安全性、有用性いずれにおいても米国のそれに比べて有意に低いことが分かった。同時にこれまでの研究結果に基づいて、肝臓機能や肝臓の薬物代謝酵素の誘導を指標とするハーブ類の安全性評価の方法を確立した。 特定保健用食品素材と医薬品の相互作用に関する研究:特定保健用食品素材となるハーブ類を試料として、医薬品との相互作用について検討した。今年度はとくにイチョウ葉エキスを長期投与すると、肝臓の薬物代謝酵素が誘導され、その結果フェノバルビタールやニカルジピンの血中濃度が低下し、その効果も減弱することを確認した。さらにハーブ類の有用性を確認するために、イチョウ葉エキス、茶カテキン、イソフラボン、プロポリスの循環器機能への効果を調べた。実験動物には若齢ラット、高齢ラット、生活習慣病ラットを用いた。その結果、イチョウ葉エキス、プロポリス、杜仲茶では、高血圧改善効果を確認した。  特定保健用食材の新たな安全性評価手法の検索:特定保健用食品は健康上に何らかの問題をもつ人々が利用する可能性が高い。本分担研究では、疾病時での安全性評価手法を確立することを目的として、様々な疾患モデル動物を用いる方法を検討してきた。今年度は、糖尿病、腎臓障害のモデル動物について、オリゴ糖類とアガリクス、カルシウムの影響について検討した。その結果、オリゴ糖類とアガリクスは糖尿病や腎臓障害を増悪させることはなかった。しかし、腎臓障害をもつラットでは、カルシウムの投与は腎臓肥大や血清尿素チッソの上昇を引き起こした。 食物繊維のエネルギー評価に関する検討:食物繊維のエネルギーは国際的にも確定されていないのが実情である。わが国でも食品表示のために緊急な課題となっていた。そこで本分担研究では食物繊維のエネルギー評価を文献的な調査に基づいて提案し、行政対応にも利用された。食物繊維やオリゴ糖では、その発酵分解性が重要な要因であることから、人に各種食物繊維や難消化性オリゴ糖を摂取させ、その発酵性を呼気中に排出される水素ガスから検討する方法と糞便を用いるin vitro の方法によるエネルギー評価法を検討した。その結果、一部の素材ではこれまでの文献値とは一致しない結果も得られ、今後さらに検討が必要であることが示唆された。
結論:
以上のように本研究課題では、7つの分担研究テーマを設定し、それぞれの方法によって研究を進めた。いずれも当初に予定した成果を得ることができたが、今後も引き続き検討する必要性や新たな課題を残した。 本研究では、現状の特定保健用食品素材のみならず、今後新たに申請される可能性がある素材や現在健康食品として広く利用されている素材の有用性や安全性のチェックを行うとともに、新たな安全性、有用性評価の方法として採用できるものを提案している。併せて、国際的には健康強調表示についての新たな進展がみられ、今後のわが国の特定保健用食品制度について考えるべき課題についても明らかにできたものと考える。
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