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文献情報

文献番号 200100314A
報告書区分 総括
研究課題 地域精神保健活動における介入のあり方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号  
研究年度 平成13(2001)年度
研究代表者(所属機関) 伊藤順一郎(国立精神・神経センター精神保健研究所) 
研究分担者(所属機関) 池原毅和(東京アドボカシー法律事務所),益子茂(多摩総合精紳保健福祉センター),金吉晴(国立精神・神経センター精神保健研究所) 
研究区分 厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
開始年度 平成12(2000)年度
終了予定年度 平成14(2002)年度
研究費 9,000,000円
研究者交替、所属機関変更  

研究報告書(概要版)

概要版 研究目的:
本研究は、「社会的ひきこもり」等の新たな精神保健関連の問題にとりくむにあたって、精神保健福祉センター、保健所、市町村保健センター等でおこなうべき地域精神保健活動について明確にすることにある。そのため、全国調査、ガイドライン作成、モデルとなる研修の実施、モデル地区での介入の実施、介入の効果判定といった一連の活動をおこなう。これらを通じて、「社会的ひきこもり」に対して実現可能で効果的な精神保健活動のモデルを作り上げようとするものである。
研究方法:
研究は最低3年間にわたっておこなう。初年度は現状についての情報収集とガイドライン暫定版を作成する。2年度以降は、研修を含んだモデル事業を実施しその効果についての実証研究をおこなう。その上で「社会的ひきこもり」に対する精神保健活動のモデルを提案する。第2年目である平成13年度の研究は以下のとおり。 《東京都多摩地区・横浜市の相談機関に対する、アンケート調査》 東京都多摩地区・横浜市の相談機関14施設に、「社会的ひきこもり(ガイドライン定義)」を主訴として来談、相談継続中の事例を対象とし、家族にアンケート調査を実施した。調査の目的は、「社会的ひきこもり」の本人および家族の状況を把握するとともに、支援の提供による相談者の負担軽減や、「社会的ひきこもり」状況の改善を追跡調査していく上でのベースラインとなる情報を得ることである。 * 対象: ガイドラインの定義に基づき作成された基準に沿い、相談担当者によって『社会的ひきこもり』を主訴に来談している事例と判断されたもので、相談担当者から研究の概要・プライバシーの保護などに関するインフォームドコンセントがなされ、文書による調査協力の同意を得られたもの。 * 調査尺度: @FAD(Family Assessment Device) 「問題解決」「意志疎通」「役割」「情緒的反応」「情緒的関与」「行動統制」の6つの機能次元から、家族の健康度を評価する。 AGHQ-12(全般的精神健康度) B対処可能感尺度 C家族困難度 D家族問診表 E基礎情報 《「ガイドライン」に基づく研修の実施》 「ガイドライン」に基づく「社会的ひきこもり」事例への援助方法を地域精神保健機関に伝達するため、平成13年度3回、平成14年度1回の研修を企画し、これを実施した。研修の対象者は全国の精神保健福祉センターの職員、および研究対象地区である、東京都多摩地区の保健所、横浜市の青少年相談センター、児童相談所の職員である。以下のような内容で、実践的な取り組みに生かされるものとした。 なお、研修は平成14年度も1回予定されているため、その分も記載した。 会場:日本青年館(東京都新宿区霞岳町) 第1回 9月24日(金) * 午前テーマ:「社会的ひきこもり」援助の原則 ガイドラインの説明(伊藤順一郎) ひきこもりの概念について(近藤 直司) 地域での活動からの声(秋田 敦子) * 午後ワークショップ 本人との面接の基本(その1)(近藤 直司 + 後藤 雅博) 家族の心理教育的グループ (その1)( 伊藤順一郎 +原 敏明) 第2回 12月14日(金) * 午前テーマ:危機状況への介入 危機状況のアセスメント(狩野 力八郎) 危機状況での具体的な対応(藤林 武史) 危機介入と資源 (金 吉晴 + 加茂 登志子) 法的な立場からのコメント(池原 毅和) * 午後:ワークショップ 本人との面接の基本(その2)(近藤 直司 +狩野 力八郎 ) 家族の心理教育的グループ (その2)(後藤 雅博 + 伊藤順一郎 +原 敏明) 第3回 3月1日(金) * 午前テーマ:社会再参加へのネットワーク 地域精神保健システムにおけるとりくみ(後藤 雅博) クリニックの臨床家の取り組み(楢林 理一郎) 地域での活動からの声(秋田 敦子) * 午後ワークショップ 家族面接の基本(その1)(吉川 悟 + 楢林 理一郎) 本人のSSTグループ(その1)(有泉加奈絵(山梨県精神保健福祉センター) + 後藤 雅博) 本人の声・家族の声 (その1)(秋田 敦子 + 原 敏明 + 伊藤順一郎:本人・家族 当事者が語る) 第4回 6月14日(金) * 午前テーマ:事例検討(研修参加者の事例) 近藤 直司 + 楢林 理一郎 狩野 力八郎 + 後藤 雅博 吉川 悟 + 伊藤 順一郎 * 午後ワークショップ 家族面接の基本(その2)(吉川 悟 + 狩野力八郎) 本人のSSTグループ(その2)(有泉加奈絵 + 後藤 雅博) 本人の声・家族の声 (その2)(秋田 敦子 + 原 敏明 + 伊藤順一郎:本人・家族 当事者が語る) 《分担研究者・研究協力者の研究活動》 本年度の分担研究者の研究課題は以下のとおりであった。 * 池原毅和:社会的ひきこもりに関する法的問題の整備 * 益子 茂:精神保健福祉センターにおける社会的ひきこもり青年を対象にしたグループ活動の試み * 金 吉晴:社会的ひきこもりの頻度に関する調査 また、研究協力者の研究として、以下のものが実施された。 * 原 敏明:青少年相談センターにおける社会的ひきこもりに対する援助活動 * 秋田敦子:社会的ひきこもりをていしている青年の共同生活のこころみ〜共同生活のなかで培われる快適さ * 後藤雅博:地域における家族教室の試み * 倉本英彦:ひきこもりに対する社会参加活動の試み〜小グループによる清掃アルバイト実践 * 狩野力八郎・近藤直司:ひきこもりケース本人への援助のあり方について * 近藤直司・後藤雅博:ひきこもり青年を対象としたSST(社会生活技能訓練)を利用した援助のあり方
結果と考察:
《東京都多摩地区・横浜市の相談機関に対する、アンケート調査》 調査の結果、対象となったひきこもり本人の性別は男性が圧倒的に多く、他の調査などと同一の結果であった。相談経路は電話相談である場合が多く、社会的ひきこもり事例が相談機関にアクセスし、相談を継続していく機会となる電話相談への応対が重要であることが示唆された。 また、医学的診断が確認されている事例は少ないが、強迫的な行為が出現している事例は全体の2割程度と多かった。強迫行為の出現とひきこもりの程度には関連が見られ、強迫行為が存在する場合はそれに対応した援助の必要性が示唆された。他の問題行動としては、家族との関係を左右する支配的な言動のある事例も少なくなかった。家族関係という側面では、何らかの家族拒否が見られる事例も半数を越えた。他方、触法行為や非行のある事例は少なかった。 社会的ひきこもりの家族は、家族機能の健康度が低下しており、精神的健康度の低下が見られた。特に本人の年齢が高い場合、家族との関係において支配的態度が見られる場合、本人が家族に対して拒否的である場合には家族機能の低下や家族の精神的健康度の低下が顕著になると考えられた。 こうしたことから、社会的ひきこもりの家族の負担を軽減するための援助の必要性が改めて確認された。また、本人の示す問題行動や、家族が本人との関係をどのように感じているのかという側面にも注目しつつ、家族を援助していくことの必要性が示された。なお、この対象者に対して「ガイドライン」に基づく援助活動が実施されているが、その転機については平成14年度の研究課題となる。 《「ガイドライン」に基づく研修の実施》 研修を実施した結果として、第1回45名、第2回59名、第3回54名の参加が得られた。参加者は全国の精神保健福祉センターに及んでいた。研修直後のアンケート調査ではおおむね良好な反応がうかがわれた。しかし、この研修の成果が実践に及んでいるかは現時点ではよくわからない。平成14年度には全国の精神保健福祉センターおよび保健所に対して社会的ひきこもり事例に対する取り組みの再調査を予定しており、それにより平成12年度の時点からどの程度の変化がもたらされているかが判明する。
結論:
本年度の研究実施内容から明確になったことは以下の2点である。 * 社会的ひきこもり事例の相談機関へのアクセスは電話相談が多いことや、家族による相談が相当数あるなどの特徴を見せている。また、家族の健康度は低下しており、家族が支援を必要としている実態が明らかにされた。「ガイドライン」がめざしている、家族支援も含めた心理社会的支援は今後とも必要である。 * 精神保健福祉担当者が、社会的ひきこもり事例への取り組みにたいして、その方針の立て方やノウハウのレベルで、研修などの学習の機会を多く求めていることが明らかになった。地域における精神保健福祉システムを充実するためにはこのような研修の機会を継続的に供給することが重要である。
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